労働問題に関する基礎知識

1 こういう話を聞きました。
  ある会社で新入社員を、社長秘書の業務に就かせました。そうしたところ、その新入社員は、社長の留守中、リラックスしてしまったのか、社長室の社長のイスに座って、社長のCDで音楽を聴いていました。そこに社長が戻って来て見つかってしまい、その社員は、直ちに解雇されました。

2 この話には、法律の観点からは、大きな問題があります。なぜなら、法律(労働契約法)では、会社は、それなりの理由(「客観的に合理的な理由」とされます)がなければ、従業員を解雇することはできないとされているからです。そして、どのような事情があれば、解雇するための「それなりの理由」があるといえるかについては、多くの裁判例の積み重ねでだいたいのところは定まっていますが、「たった1回、社長の留守中に社長のイスで勝手に社長のCDを聴いていた」ということだけでは、「それなりの理由」があるといえるとは、考えにくいのです。

3 この話では、解雇された新入社員は、そのようなことをしているのを見つかってしまったのだから、解雇されても仕方がないと納得したようです。また、解雇した会社の方も、解雇するのは当然と考えたようです。しかしながら、もし新入社員が裁判をして争っていれば、そのような解雇は無効とされる可能性が大きかったと考えられます。このように、会社と従業員の雇用関係では、従業員側は、法律によって「意外と」守られているといえます。

4 私が、この話を聞いたのは、二十年前後前のことですが、最近でも、「そんなことで解雇されてしまったのか」と思うような相談(つまり、裁判をすれば、明らかに無効とされるような解雇についての相談)を受けることが、たまにあります。「それなりの理由がなければ、従業員を解雇することはできない」という法律を知らない社長さんも、まだまだいるようです。また、そのような法律を知らない従業員の方も、随分おられます。

5 雇用関係で、法律によって従業員の側が「意外と」守られているのは、解雇の場面だけではありません。雇用関係で何らかの処分を受けて、そのことを疑問に感じたときは、法律の専門家に相談することをお勧めします。

横谷法律特許事務所は、広島市中区にある法律事務所です。広島市の皆さまの医療過誤、交通事故、企業法務、相続問題を中心に、あらゆるお悩みの相談やトラブル解決を承ります。お客様に対しては、法的観点からみた現在の状況と今後の見通しについて、できるだけ詳しくわかりやすくご説明いたします。お困りのことがありましたら、ぜひ当事務所へご相談ください。