休憩時間に働いた分の賃金を請求できるか

労働基準法の定め

労働基準法は、休憩時間について、以下のように定めます。

まず、使用者は、労働時間(実労働時間)が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を、労働時間の途中に与えなければなりません(労働基準法34条1項)。

また、休憩時間は、一斉に与えなければなりません(同条2項)。ここで、一斉付与の単位は事業場です(昭和22年9月13日・基発第17号)。

さらに使用者は、休憩時間を労働者に自由に利用させなければなりません(同条3項)。この点について、例えば、休憩時間中の外出に使用者の許可を必要とすることが許されるかが問題となり得ますが、行政解釈は、「事業場内において自由に休息しうる場合には必ずしも違法にはならない」としています(昭和23年10月30日・基発第1575号)。

法律で決められた長さの休憩時間を与えないこと、休憩時間を事業場の労働者に一斉に与えないこと、休憩時間を労働者に自由に利用させないことは、いずれも労働基準法違反となります。このような場合、労働基準監督署に違反の事実を申告して、是正を求めることができます。

 

「休憩時間」といえるかどうか

休憩時間とは、単に作業に従事しない手待時間を含まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間とされます(昭和22年9月13日・基発第17号)。

就業規則等で「休憩時間」と定められた時間帯が、労働基準法上の「休憩時間」と評価できるかどうかが問題となることがあります。例えば、警備業務のように長時間勤務を行う労働において、仮眠すること等とされた「休憩時間」が、労働基準法上の「休憩時間」といえるかが問題となります。

この点について、使用者が労働者に対して、①通常の業務遂行の範囲内で生じることが想定される事態で、あらかじめ使用者の定めたものが生じた場合、あるいは使用者が個別に指示した場合に、労務を遂行しなければならない職務上の義務を課しており、かつ、②適切な時期に、労働者がそのような義務を履行できるようにするために、労働者を場所的に拘束する等、労働者を使用者の指揮命令下に置いているといえる場合には、そのような「休憩時間」は、労働基準法上の「休憩時間」とはいえないとした裁判例があります(東京地裁平成10年6月12日判決・判例時報1655-170)。

もし、就業規則等で定められた「休憩時間」が労働基準法上の「休憩時間」といえないのであれば、そのような「休憩時間」は「労働時間」とみなされることから、労働者は、その時間に対応する賃金を請求することができます。

 

「休憩時間」中に仕事をした場合の賃金

以上は、就業規則等で定められた「休憩時間」が、全体として、労働基準法上の「休憩時間」と評価できるかどうかの問題です。

では、「休憩時間」が、労働基準法上の「休憩時間」といえたとして、そのような休憩時間中に仕事をした場合、その仕事をした時間分の賃金を請求できるでしょうか。

これは、使用者が休憩時間に仕事をすることを労働者に命じていたといえるかどうかによります。休憩時間中に仕事をする必要性が認められる等により、使用者が労働者に対して、休憩時間中に仕事をすることを(黙示的にせよ)命じていた(指示していた)といえれば、休憩時間中に仕事をした場合、その仕事に要した時間分の賃金を請求することができます。反対に、上記のような使用者の業務命令がなされていたと認められなければ、休憩時間中に仕事をしても、労働者が自発的に行ったものとして、その時間分の賃金を請求することはできません。

労働に関する紛争については、広島市中区にある法律事務所、横谷法律特許事務所にご相談ください。

広島市を中心に呉市、東広島市、山口県や岡山県、愛媛県隣県などにお住まいの皆さまの賃金についてのお悩みの相談やトラブル解決を承ります。

法的観点からみた現在の状況と今後の見通しについて、できるだけ詳しくわかりやすくご説明いたします。お困りのことがありましたら、ぜひ当事務所にご相談ください。