遺留分を請求された場合の対処方法

遺留分とは?

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に最低限保障されている相続財産の取り分をいいます。被相続人が行った、遺贈または贈与によって、相続人が遺留分を相続できない場合があります(「遺留分の侵害」といいます)。このような場合、遺留分を侵害された相続人(「遺留分権利者」といいます)は、遺贈または贈与を受けた者に対して、「遺留分侵害額の請求」をすることができます。遺留分侵害額請求をされた、遺贈または贈与を受けた者は、遺留分を侵害された相続人に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払義務を負うことになります。

では、遺留分侵害額請求をされた場合、どのように対処すべきでしょうか。

 

遺留分の計算の確認

遺留分の算定方法はかなり複雑です。したがって、相続人の主張する遺留分が、民法の規定に従って、適正に算定されているかどうかを、まず確認すべきです。

なお、令和元年7月1日より施行された改正相続法では、相続人に対する生前贈与については、原則として、相続開始前の10年間にされたものに限り、遺留分を算定するための財産の価額に含めることとされました(民法1044条)。相続法改正前は、相続人に対する生前贈与は、その時期を問わず、その全てが、遺留分を算定するための財産の価額に算入されていました(最高裁平成10年3月24日判決・民集52-2-433)。

 

消滅時効の確認

また、消滅時効についても確認すべきです。

遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が、相続の開始と遺留分を侵害する贈与または遺贈を知った時から1年間行使しないときは時効により、また、相続開始の時から10年間を経過したときは除斥期間により、それぞれ消滅することとされます(民法1048条)。

また、上で、「遺留分侵害額請求をされた遺贈または贈与を受けた者は、遺留分を侵害された相続人に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払義務を負うことになります。」と述べました。これは、遺留分侵害額請求をすることにより、遺留分権利者の遺留分を侵害した者に対する金銭債権が発生することを意味します。このようにして発生した金銭債権は、令和2年3月31日以前に発生した場合は10年間の(債権法改正前の民法167条1項)、同年4月1日以降に発生した場合は5年間の(債権法改正後の民法166条1項1号)消滅時効にかかります。

 

支払期限の猶予

以上のようにして、遺留分権利者の主張する遺留分が適正に算定され、かつ、遺留分侵害額請求権が時効消滅していないこと等が確認されたのであれば、遺留分権利者と話し合うことになります。

なお、遺留分侵害額請求をされた者が、裁判所に請求することにより、裁判所は、遺留分侵害額請求により生じた金銭債務の全部又は一部の支払について、相当の期限を与えることができるとされます(民法1047条5項)。

一般に、遺留分侵害額請求により生じる金銭債務については、遺留分権利者が、遺贈または贈与を受けた者に対して、その支払を請求することにより、遺贈または贈与を受けた者は、直ちに支払うべき義務を負います。ただ、例えば、相当以前に被相続人から金銭を贈与されたが、遺留分侵害額請求を受けた時点では、すでに手元に金銭が残っていないということも考えられます。このような場合にも、贈与を受けた者が、遺留分侵害額請求にかかる金銭を遺留分権利者に直ちに支払わなければならないとするのは、酷な場合もあることから、上記のように、裁判所が支払期限の猶予を与えることができるとされました。

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