遺産の使い込みが発覚した場合の適切な対処法

他の相続人が遺産の使い込みをした場合、どうすれば、その遺産を取り戻せるでしょうか。
この記事では、遺産の使い込みが発覚した場合の対処法について解説します。

よくある遺産の使い込みのケースとは?

よくある遺産の使い込みのケースとしては、被相続人の預貯金を無断で出金する、被相続人の株式や不動産などを無断で売却する等が、あります。

相続人の一人が遺産の預金を無断で出金した場合の対処方法

では、相続人の一人が遺産の預金を無断で出金した場合には、どのように対処すればよいのでしょうか。

無断で出金された預金も遺産に含めて、遺産分割を行う。

まず、遺産分割をまだ行っていない場合には、無断で出金された預金も遺産に含めて、遺産分割を行う方法が考えられます。

これについては民法906条の2に規定があり、遺産の分割前に遺産に属する財産が処分されても、共同相続人全員の同意があれば、その処分された財産も分割時に遺産として存在するものとみなすことができます(同条1項)。つまり、無断で出金された預金も遺産に含めて、遺産分割をすることができます。

また、遺産の使い込みをした相続人は同意をしないと考えられますが、使い込みをした相続人の同意は不要とされているため(同条2項)、他の相続人全員が同意すれば、使い込まれた遺産も計算に入れて遺産分割をすることができます。

無断で出金した相続人に対して訴訟を提起する。

無断で出金された預金を遺産に含めることについて、無断で出金した相続人以外の共同相続人全員の同意が得られない場合には、無断で出金した相続人に対して返還訴訟を提起することが考えられます。

訴訟の形態として考えられるのは、法律上の原因がないのに利益を得た者に対しそれによって損失を被った者が提起する不当利得返還訴訟、および違法な行為によって損失を被った者が提起する不法行為に基づく損害賠償請求訴訟です。

この場合、他の相続人が請求できるのは、自らの法定相続分が限度となります。

遺産分割の具体的な事例

具体的な例として、遺産として預金が3000万円あり、相続人はA、B、Cの3人で、相続分は、それぞれ3分の1だったとします。そして、相続開始後にAが預金3000万円のうち、1500万円を無断で出金したとします。この場合、本来A、B、Cは、それぞれ無断出金前の遺産の預金3000万円から、1000万円ずつを取得するはずです。
家庭裁判所で遺産分割を行う場合、Aが無断で出金した1500万円を遺産に含めることを、BとCが同意した場合、家庭裁判所は審判で、① 出金されずに残っている預金1500万円から、BとCにそれぞれ750万円ずつ取得させるとともに、②Aが、BとCそれぞれに対して、250万円ずつ支払うことを命じることとなります。
仮に、B、Cのいずれかが出金された1500万円を遺産に含めることについて同意しない場合、家庭裁判所の遺産分割では、出金されずに残っている預金1500万円(これだけが遺産とされます)から、A、B、Cがそれぞれ500万円ずつ取得します。その上で、BとCは、Aに対して、それぞれ500万円の支払を求める訴訟を起こさなければならなくなります。

まとめ

今回は遺産(預金)の使い込みがなされ場合の対処法について解説しました。
遺産の使い込みがなされた場合には、すぐに専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
相続に関してお困りのことがありましたら、ぜひ当事務所にご相談ください。