新型コロナウイルス患者用の病床の不足

新型コロナウイルス患者用の病床の不足

 

1 8月13日大阪府は、感染症法に基づき、府内の約80の医療機関に対して、新型コロナウイルスの軽症・中等症患者用の病床を合計約490床確保するよう要請した。感染症法では、医療機関が正当な理由なく病床確保の要請に応じない場合、都道府県が勧告でき、勧告にも従わなければ、医療機関名を公表できるとされる(感染症法16条の2)。

大阪府では、今春の「第4波」で、自宅療養中などで医療を受けられずに新型コロナウイルスにより死亡した患者は少なくとも19人に上るとされる(2021年8月7付産経新聞)。このような事態を回避するために、病床確保を要請したことは、当然である。

ただ、吉村知事は、看護師不足などが、上記の感染症法の「正当な理由」と認められるとして、勧告に従わない医療機関名の公表には否定的とされ(2021年8月12日付産経新聞)、やや心もとないところもある。

2 ところで、8月18日時点の大阪府の新型コロナ患者用の確保病床は、重症病床が587床、軽症中等症病床が2547床で合計3134床とされる(同府の新型コロナウイルス感染症関連特設サイト)。

一方、英国のロンドンは、人口約896万人(2019年時点。JETROのホームページより)と、大阪府(人口約882万人)とほぼ同規模の都市であるが、過去1年間の両都市の新型コロナウイルスにかかる入院者数、重症入院者数の推移は、別紙のとおりである(ロンドンの数値は、https://coronavirus.data.gov.uk/details/healthcareより)。

ロンドンでは、2020年12月末から2021年2月初めまでの間の新型コロナウイルスの入院患者は5000人を超えており、ピーク時は、8000人近くに達している。これに対して、現時点での大阪府のコロナ患者用病床は、上述のとおり、重症、軽症中等症病床合わせて3100床余りで、ピーク時のロンドンの新型コロナにかかる入院者数の約4割に過ぎない。

3 新型コロナウイルス感染症が認められてから、1年半余りが経過しているのに、未だに十分な病床が確保されていないことは、お粗末というほかない。そもそも、新型コロナに対する医療体制の整備は、都道府県ではなく、国が主体となって対応すべき事柄ではないだろうか。

そして、新型コロナにかかる医療体制の不備のしわ寄せが、飲食店などごく一部の業者だけに及ぶようなことは、あってはならない。

以上