医療過誤が疑われる病院が閉院した場合の損害賠償請求の方法
医療過誤によって重大な被害を受けたにもかかわらず、当時受診した病院がすでに閉院している場合、「請求そのものが不可能では」と懸念される方も多くいらっしゃいます。
そこで本稿では、閉院後であっても誰にどのようにして損害賠償請求を行い得るか、また請求に先立って不可欠となるカルテの確保方法について解説していきます。
誰に対して損害賠償請求するか?
医療過誤による損害については、担当した医師、看護師等個人に対して不法行為責任(民法709条)を追及できます。
また、医師等の勤務先の病院に対して使用者責任(民法715条)を問うことも可能です。勤務先の病院に対しては、診療契約上の義務を怠ったとして、「債務不履行責任」を問うこともできます。
このように損害賠償請求の相手方としては、①担当した医師等の個人と、②医師等の勤務先の病院の2通りが考えられます。
担当医師等個人に請求する場合
担当医師等個人に対する損害賠償請求は、勤務先病院が閉院していたとしても、インターネット検索等により、その医師らの勤務先等が判明すれば、することができます。
病院に対して請求する場合
担当した医師等の勤務先病院に対して損害賠償請求したいが、その病院が閉院してしまった場合ですが、一般に、病院が閉院する場合、その病院の事業が他の病院に承継される場合と、承継されない場合があります。
病院の事業が承継された場合
閉院した病院の事業が他の病院に承継され、損害賠償債務もあわせて承継されている場合には、承継先の病院に対して損害賠償請求することとなります。
病院の事業が承継されない場合
閉院した病院の事業が他の病院に承継されない場合、若しくは、閉院した病院の損害賠償債務が他の病院に承継されない場合は、閉院した病院に対して損害賠償請求することは、事実上、難しくなると考えられます。このような場合は、上で述べた、担当した医師等個人に対する損害賠償請求を、検討することになります。
カルテの取寄せ
医療過誤に関して損害賠償請求するには、カルテの確認が不可欠です。
病院が閉院した場合、カルテの取り寄せ手続は、以下のようになります。
病院の事業が承継された場合
閉院した病院の事業が他の病院に承継された場合は、カルテも承継されると考えられますから、承継先の病院にカルテ開示を求めることになります。
病院の事業が承継されない場合
カルテの法定保存期間は5年とされていますが(医師法24条2項)、期間内であっても病院が閉院した場合、入手が困難になることがあります。
カルテの保存義務者は閉院時点の管理者とされていますが、管理者がいない場合、都道府県や市町村などの行政機関に保管されていることもあります。
カルテの所在が不明の場合、その地域の保健所や医療安全支援センターに相談することをお勧めします。
まとめ
横谷法律特許事務所では、医療過誤に関するご相談を承っております。
お困りの方は、お気軽にお問い合わせください。