風邪の症状のある従業員を休ませる場合、会社は、休業手当を払う必要があるか?
現在、感染防止のため、発熱等の風邪の症状がある従業員は、会社を休むことが望ましいとされています。
そのような従業員が自主的に休めば問題ありませんが、そうではなく、会社の指示で休ませる場合、会社は、休業手当(労働基準法26条)を支払う必要があるでしょうか。
- 労働基準法26条によれば、「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合、会社は、休業した 従業員に対して、平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません。したがって、休業手当を支払わなければならないかどうかは、従業員を休ませることが、「使用者の責に帰すべき事由」によるかどうかによります。
- ここで、労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」とは、「企業経営者として不可抗力を主張しえないすべての場合をも含む」とされます(熊本地方裁判所八代支部昭和37年11月27日決定・労働関係民事裁判例集13-6-1126)。
本件についてみれば、上記のとおり、感染防止のため、発熱等の風邪の症状がある従業員は、勤務を休むことが推奨されています(厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」等)
また、例えば、プロ野球の広島カープは、報道陣に対して、事前の検温で37.5度以上の発熱があれば、マツダスタジアムに入場できないこととしています(2020年2月29日付読売新聞)。
一方、万一、発熱等の症状のある従業員をそのまま勤務させていた会社で、新型コロナウイルスの集団感染が発生した場合、そのような会社は、感染した従業員に対して、「安全配慮義務違反」による損害賠償責任を負うことが、十分考えられます。
以上のことからすれば、発熱等の風邪の症状がある従業員に対しては、在宅勤務が可能であればそのように指示し、在宅勤務ができない場合、会社が休業するよう指示することは、「不可抗力」といえ、したがって、「使用者の責に帰すべき事由による休業」とはいえないことになりそうです。もし、そうであれば、会社は休業手当を支払う必要はないと、考えられます。
以上