所有者が不明な不動産の対応
現在、所有者が分からない土地や空き家が増えていることが問題とされ、新聞等でも取り上げられるようになっています。
「共有地を売却したいけれど、共有者の1人の所在がわからない」、「土地の境界確認をしたいけれど、隣地の所有者が誰かわからない」等、所有者不明の不動産に関わることとなった場合、どのように対処すればよいでしょうか?以下に、簡単にご説明します。
1.登記を確認する
まずは、登記されている所有者情報を把握することから始めます。登記を確認するためには、まず、土地の地番を特定する必要があります。「地番」とは、土地の番号であり、住所(住居表示)とは異なります。地番の特定には、ブルーマップ、住宅地図、法務局にある公図等を利用します。土地の住所が分かっている場合は、管轄の法務局に電話で問い合わせれば、地番を教えてもらえます。(ただし、ブルーマップが作成されていない地域の地番については、このサービスは受けられないようです。)
2.所有者の所在・相続人の特定
登記には、必ず所有者の住所が記載されていますので、この登記上の住所での住民票を取り寄せることにより、所有者の所在や生存確認等をすることができます。また、本籍地が判明すれば、戸籍の附票(その戸籍が作られてから[または、その戸籍に入籍してから]現在に至るまでの住所が記録されている書類のことです)を取り寄せることができますので、ここから所有者の所在を特定できる場合もあります。
すでに所有者が亡くなっていた場合には、相続人の有無を調査し、それが判明した場合には、上述の手続と同じように、住民票等を取り寄せて、相続人の所在を確認することになります。
なお、本人以外の第三者(同一世帯人は除きます)が、本人からの委任状無しに、住民票や戸籍の取寄せを行うことはできません。この点、弁護士は、職務上必要と認められる場合には、他人の住民票等を取り寄せることができますので、上記調査をご検討の際には、お気軽にお問い合わせください。
3.管理人選定等の手続
住民票や戸籍の附票を取り寄せても土地の所有者(共有者)の所在がわからない場合、以下の手続をとることが考えられます。
⑴不在者財産管理人選任の申立て
例えば、共有地を売りたいとき、共有者のうちの1人の所在が、上記2の手続をしてもわからない場合、この所在不明の共有者について、家庭裁判所に「不在者財産管理人」を選任してもらいます。選任された不在者財産管理人は、家庭裁判所の許可を得て、所在不明の共有者に代わって、他の共有者とともに共有地を売却することができます。
民法では、従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない者を「不在者」として、「不在者」の財産を管理する人がいない場合、「利害関係人」は、家庭裁判所に対して、「不在者財産管理人」の選任を申立てることができます。不在者財産管理人は、不在者の財産を管理するほか、家庭裁判所の許可を得た上で、不在者に代わって、不在者名義の不動産の売却や遺産分割等を行うことができます。
⑵相続財産管理人選任の申立て
例えば、共有地を売却しようとしたとき、共有者の1人が既に亡くなっており、上記2の手続をした結果、その人には戸籍上、相続人が存在しないことが判明したような場合は、家庭裁判所に「相続財産管理人」を選任してもらいます。選任された相続財産管理人は、相続人の捜索や相続債権者(相続財産に属する債務の債権者、すなわち、被相続人に対する債権者のことです)に対する債務の弁済等を行います。そして、相続人が存在しないことが確定し、特別縁故者に対する財産分与もなされないときは、亡くなった共有者の持分は、他の共有者に与えられることになりますので、共有地を売却できるようになります。
共有者の1人が亡くなり、相続人の存在、不存在が明らかでない場合(相続人全員が相続放棄をして、結果として相続する者がいなくなった場合も含みます)、「利害関係人」は、家庭裁判所に対して、「相続財産管理人」の選任を申立てることができます。相続財産管理人は、相続人の捜索と相続財産の管理清算等を行います。そして、相続人の不存在が確定して、相続財産管理人による清算等の手続が終了し、特別縁故者(例えば、内縁の妻等)も存在しないときは、民法255条の規定により、亡くなった共有者の持分は、他の共有者が取得することになります(最高裁平成元年11月24日判決・民集43-10-1220参照)。
もう少し詳しくお知りになりたい場合は、こちらもご参照ください。
※国土交通省中国地方整備局建政部・空き家対策意見交換会第2回会議資料及び平成25年度北海道町村会条例研究会第3回資料より抜粋
迅速な解決のお手伝いを致しますので、所有者が不明の不動産に関してお困りの際は、お気軽にご相談ください。
以上