工事現場でモノレールで資材を運搬していたところ、モノレールが脱線したため、転落して負傷しました。会社に対して損害賠償請求訴訟を提起したところ、和解が成立し、解決金が支払われました。
モノレールが脱線したことから、裁判では、会社によるモノレールの管理が適切だったかどうかが主に争われました。
ところで、労災事故の事案では、事故の発生状況、会社の安全管理体制などが争点となりますが、労災事故が発生すると、労働基準監督署が現場に入り、事故の発生状況・発生原因、会社の安全管理体制などについて調査します。調査の結果は、報告書(「災害調査復命書」といいます)にまとめられます。
労災事故の裁判では、会社の安全管理体制が不適切だったことを、事故により負傷した労働者が証明しなければならず、そのためには、事故の発生状況、会社の安全管理体制が前提となりますが、それらを労働者が把握することは容易ではありません。
労働基準監督署が事故に関して作成した災害調査復命書には、上記のとおり、事故の発生状況、会社の安全管理体制などが記載されていることから、労働者が、その内容を知ることができれば、会社の安全管理体制上の過失(落ち度)を証明する上で、非常に役に立ちます。しかしながら、当時、労働基準監督署は、ほとんどの場合、災害調査復命書の開示に応じませんでした。
この事例では、労働者の求めに応じて裁判所が、労働基準監督署長に対して、災害調査復命書の開示を命じる決定をしました(広島地裁平成17年7月25日決定・労働判例901-14)。これにより災害調査復命書の一部が開示され、会社の過失の裏付けとなりました。