依頼者は営業職でしたが、会社が新年度からの営業ノルマを不当に高い売上高に設定しました。それまでの営業実績からすると、いくら頑張ったところで、依頼者が新年度に達成できる売上高は、会社の設定したノルマをかなり下回ることが予想されました。このため、このままでは給与の減額などが見込まれました。
 
 このため会社に対して、設定された営業ノルマの無効の確認などを求める訴訟を提起しました。その結果、和解によって、営業ノルマは妥当な金額に引き下げられました。
 
 営業ノルマなど、給与の増減に結びつくような評価基準は、その内容が合理的でなければ、有効(適法)とは言えません。この事例では、会社が設定したノルマが合理的といえるかどうかが、争点となりました。
 
 この事例に関連する裁判例として、年俸制に基づき、雇用主が一方的に給与を減額したことが有効か否かが争われた事案で、裁判所は、「期間の定めのない雇用契約における年俸制において、使用者と労働者との間で、新年度の賃金額についての合意が成立しない場合は、年俸額決定のための成果・業績評価基準、年俸額決定手続、減額の限界の有無、不服申立手続等が制度化されて就業規則等に明示され、かつ、その内容が公正な場合に限り、使用者に評価決定権があるというべき」と判断しています(東京高裁平成20年4月9日判決[日本システム開発研究所事件])。