依頼者運転の車両は、カーブを走行中に、対向車線を走行してきた相手方車両と衝突しました。カーブのため依頼者の車両はセンターラインを越えて走行していましたが、衝突前、依頼者は相手方車両に気づいて減速したものの、相手方車両は、依頼者の車両に気づかず、減速もせずにカーブに進入してきました。このため、相手方の前方不注視などの過失の方が、依頼者の過失よりも大きいと考えられました。過失割合について当事者間で折り合いがつかず、訴訟が提起されました。
 
 訴訟の結果、判決は、センターオーバーした依頼者の過失よりも、相手方の前方不注視などの過失が大きいとして、過失割合を、依頼者35、相手方65と認定しました。

 自車がセンターラインを越えて、対向車線を走行してきた相手方車両に衝突した場合、センターラインを越えた車両の過失割合が100%とされることが一般です(別冊判例タイムズ38号「過失相殺率の認定基準」の【150】図)。しかしながら、この事例のように、カーブで自車がセンターラインをそれほどはみ出しておらず、一方、相手方が左寄りに走行していれば衝突せずにすれ違う余裕が十分あった場合は、相手方の過失の方が大きいと認定されることもあります。
 
 この事例のように、センターオーバーした車両よりも、相手方の前方不注視などの過失の方が大きいとされた裁判例として、東京高裁昭和55年2月28日判決・交通事故民事裁判例集13巻1号53頁があります。交通事故の過失割合は、上記判例タイムズ別冊「過失相殺率の認定基準」に基づいて認定されることが多いのですが、本事例のように少し状況が異なることにより、過失割合が大きく変動することがあるので注意が必要です。