交通事故での信号サイクルの活用

1 信号サイクルが必要となる場面とは?

  例えば、信号機のある交差点を直進中、同じ交差点に、右方向あるいは左方向から赤信号を無視をして進入してきた相手方車に衝突されるという交通事故に遭ったとします。ところが、事故の相手方は、「自分の対面信号は青だった」と言い張ります。このような場合、目撃者の証言が得られる等して、相手方の信号無視を立証できればよいのですが、目撃者等もなく、立証が困難な場合も少なくありません。このような場合に「信号サイクル」が役に立つことがあります。信号サイクルを調べることによって、どちらの信号が青だったのかを明らかにすることが出来る場合があります。

 

2 「信号サイクル」とは何か?

  信号灯が青→黄(青点滅)→赤と一巡することを「信号サイクル」又は「信号周期」といいます。

  この信号サイクルは、交通量、交差点の大きさ、歩行者の横断時間等を考慮して決められます。一般に、交通量の多い交差点では、サイクルの時間は長く設定されています。また、同じ交差点でも、曜日、時間帯により異なるパタンの信号サイクルが設定されることがあります。

3 信号サイクルの調べ方

信号サイクルは、交通量等に応じて随時調整されます。このため、交通事故発生時点と現在とで、事故が発生した交差点の信号サイクルが異なることがあります。事故発生時点の信号サイクルを調べるには、各都道府県の警察本部等に対して、情報公開条例に基づき、「信号サイクル表」の開示を請求する必要があります。また、弁護士に依頼して、弁護士会を通して照会することにより、更に詳しく信号サイクルを調べることも可能です。

4 信号サイクル表の見方

  「信号サイクル表」には、概ね次のような図及び表が記載されています。

信号サイクル表のサンプル

上記サンプルの信号サイクル表の見方を、簡単にご説明致します。

⑴ 上部の交差点の図は、この信号サイクル表が、同交差点に設置されている信号機に関するものであることを示します。

⑵ 「ステップ番号」の1~12までに、「流動図」等が記載されていますが、これは、この交差点の信号が、1から12までの「ステップ」に分かれていることを示します。

⑶ 「ステップ名称」と流動図の下に記載されている記号等の意味は、以下のとおりです。






  

 

    ⑸ 下の方に記載されている数字は、それぞれのステップの継続時間(秒)で、1ステップから順次、設定された秒数を刻     んで進みます。ここでは、1ステップが47秒続いた後、2ステップが10秒続き、3ステップが4秒、4ステップが3秒・・・という    ように進み、1~12のステップで構成されている1つのサイクルが、120秒間で回っていることがわかります。
      また、12ステップまで終わると、再度1ステップへ戻り、以後、同様に繰り返します。

⑹ 以上を踏まえると、この信号サイクル表の信号灯は、以下のように表示されることがわかります(この交差点では、1~6ステップが東西方向の交通を、8~11ステップが南北方向の交通を、それぞれ進行させます)。

 1ステップ:東西に進行する歩行者(1P)及び車両(1V2V)の信号は青、南北に進行する歩行者(3P)及び車両(3V)の        信号は赤(47秒間)。
           南北に進行する歩行者(3P)及び車両(3V)の信号は、7ステップまで赤が継続。
2ステップ:東西に進行する歩行者(1P)の信号が青点滅(10秒間)。
3ステップ:東西に進行する歩行者(1P)の信号が赤(4秒間)。
4ステップ:東に進行する車両(1V)の信号が黄(3秒間)。
          この間、西に進行する車両(2V)の信号は、5ステップまで青(時差式信号)。
5ステップ:東に進行する車両(1V)の信号が赤(10秒間)。
6ステップ:西に進行する車両(2V)の信号が黄(3秒間)。
7ステップ:西に進行する車両(2V)の信号が赤(2秒間。この時、この交差点の信号は全て赤である。)
8ステップ:南北に進行する歩行者(3P)及び車両(3V)の信号が青(25秒間)。
9ステップ:南北に進行する歩行者(3P)の信号が青点滅(8秒間)。
10ステップ:南北に進行する歩行者(3P)の信号が赤(2秒間)。
11ステップ:南北に進行する車両(3V)の信号が黄(3秒間)。
12ステップ:南北に進行する車両(3V)の信号が赤(3秒間。この時、この交差点の信号は全て赤である。)
           この後、1ステップに戻ります。

 

※当方が警察本部から取り寄せたマニュアルもご参照ください。

 →「信号現示照会マニュアル」(抜粋)


上記マニュアルの用語解説

※「信号現示」

上記マニュアルに記載されている「信号現示」とは、信号交差点において、信号が青になった時の交通の流れのことです。同マニュアル1頁に記載されている現示階梯図は、


という青信号時の交通の流れを表しています。つまり、「2現示の信号機」とは、1サイクルの中で、青信号により通行権を得る交通の流れが2通りある信号機のことです。

 

5 信号サイクルによる解決事例

  ここで、交通事故にかかる損害賠償請求訴訟の中で、信号サイクルを調査することにより、解決に至った事例を紹介致します。なお、個人情報保護の関係から、事例の内容を一部改変しております。

 信号のある交差点(以下、「本件交差点」といいいます)で、バイクが自動車に衝突されました(当方は、バイク運転手の訴訟代理人でした)。バイクの運転手(以下、「甲」といいます)は、事故の直前は信号待ちをしており、対面信号が青に変わったので、本件交差点に進入したところ、左側から赤信号を無視して交差点に進入してきた自動車に衝突されました。ところが、自動車の運転手(以下、「乙」といいます)は、自分の対面信号は青だったから、バイクの方が赤信号を無視して交差点に進入したと主張しました。同事故において、交差点の信号に関する目撃証言は得られませんでした。

 乙によると、乙は時速40~50㎞ぐらいで走行しており、本件交差点に到達する前、交差点A及び交差点Bを、いずれも赤信号で停止することなく、青信号で通過した後、本件交差点に到達したということでした。また、本件交差点に到達した時、同交差点のすぐ先(乙の進行方向)の交差点Cの信号は、左矢印と赤が表示されていたということでした。(下記の図ご参照)




 

 そこで、当方は、県警察本部から交差点A、B、C及び本件交差点の信号サイクル表を取り寄せ、同サイクル表から、それぞれの交差点の信号のサイクルと、それらの連動状況が判明しました。その結果、時速40~50㎞で走行する乙が、交差点A及び交差点Bを青信号で通過した後、本件交差点に到達し、かつ、本件交差点到達時に交差点Cの乙の対面信号が、左矢印と赤ならば、本件交差点の乙の対面信号は必ず赤となることが、判明しました。

その結果、当方の主張(本件事故は、赤信号を無視して交差点に進入した乙の一方的な過失によること)にほぼ沿った内容で、和解が成立しました。

上記は、交通事故の際に問題となる事柄の一例に過ぎません。交通事故に関する紛争でお困りの際は、お気軽にご相談ください。

以上