解決事例(労働問題関係)

 

 

1 懲戒解雇され、退職金が支払われなかったが、訴訟の提起により退職金が支払われた事例

依頼者は、比較的軽い業務上の不祥事を理由として、長年勤務してきた会社から懲戒解雇されました。本来であれば支払われるべき、1000万円近い退職金は、懲戒解雇したから支払わないと、会社が主張しました。

会社に対して退職金などを請求する訴訟を起こしました。裁判所から和解の勧告がなされ、規定による退職金額に近い金額を会社が支払うことなどを内容とする、和解が成立しました。

一般に、懲戒解雇したことを理由に、会社が退職金全額を支給しないことができるのは、労働者のそれまでの勤続による会社に対する貢献を打ち消すほどの、重大な不正行為、背信行為があった場合に限られるとされます。

過去の裁判例としては、酒気帯び運転で罰金刑を科せられ、郵便事業会社から懲戒解雇された労働者が退職金の支払を求めた事案では、自己都合退職した場合の退職金の約3割の支払が認められました(東京高裁平成25718日判決)。また、飲食店チェーンの店長だった原告が、不正な経理処理などを理由として懲戒解雇された事案では、自己都合退職した場合の退職金の半額の支払が認められています(神戸地裁平成141218日判決)。これに対して、会社の機密書類を外部に漏えいしたことを理由として懲戒解雇された事案では、会社に対する重大な背信行為であるとして、会社が退職金を一切支給しなかったことが適法とされました(東京地裁平成20118日判決)

 

2 会社が不当に高い営業ノルマを設定したところ、訴訟の提起により、妥当な金額のノルマに変更され た事例

依頼者は営業職でしたが、会社が新年度からの営業ノルマを不当に高い売上高に設定しました。それまでの営業実績からすると、いくら頑張ったところで、依頼者が新年度に達成できる売上高は、会社の設定したノルマをかなり下回ることが予想されました。このため、このままでは給与の減額などが見込まれました。

このため会社に対して、設定された営業ノルマの無効の確認などを求める訴訟を提起しました。その結果、和解によって、営業ノルマは妥当な金額に引き下げられました。

営業ノルマなど、給与の増減に結びつくような評価基準は、その内容が合理的でなければ、有効(適法)とは言えません。この事例では、会社が設定したノルマが合理的といえるかどうかが、争点となりました。

この事例に関連する裁判例として、年俸制に基づき、雇用主が一方的に給与を減額したことが有効か否かが争われた事案で、裁判所は、「期間の定めのない雇用契約における年俸制において、使用者と労働者との間で、新年度の賃金額についての合意が成立しない場合は、年俸額決定のための成果・業績評価基準、年俸額決定手続、減額の限界の有無、不服申立手続等が制度化されて就業規則等に明示され、かつ、その内容が公正な場合に限り、使用者に評価決定権があるというべき」と判断しています(東京高裁平成2049日判決[日本システム開発研究所事件])

 

3 労災事故の裁判で、労働基準監督署の調査報告書が開示された事例

工事現場でモノレールで資材を運搬していたところ、モノレールが脱線したため、転落して負傷しました。

会社に対して損害賠償請求訴訟を提起したところ、和解が成立し、解決金が支払われました。

モノレールが脱線したことから、裁判では、会社によるモノレールの管理が適切だったかどうかが主に争われました。

ところで、労災事故の事案では、事故の発生状況、会社の安全管理体制などが争点となりますが、労災事故が発生すると、労働基準監督署が現場に入り、事故の発生状況・発生原因、会社の安全管理体制などについて調査します。調査の結果は、報告書(「災害調査復命書」といいます)にまとめられます。

労災事故の裁判では、会社の安全管理体制が不適切だったことを、事故により負傷した労働者が証明しなければならず、そのためには、事故の発生状況、会社の安全管理体制が前提となりますが、それらを労働者が把握することは容易ではありません。労働基準監督署が事故に関して作成した災害調査復命書には、上記のとおり、事故の発生状況、会社の安全管理体制などが記載されていることから、労働者が、その内容を知ることができれば、会社の安全管理体制上の過失(落ち度)を証明する上で、非常に役に立ちます。しかしながら、当時、労働基準監督署は、ほとんどの場合、災害調査復命書の開示に応じませんでした。

この事例では、労働者の求めに応じて裁判所が、労働基準監督署長に対して、災害調査復命書の開示を命じる決定をしました(広島地裁平成17725日決定・労働判例901-14)。これにより災害調査復命書の一部が開示され、会社の過失の裏付けとなりました。