解決事例(交通事故関係)

 

 

1 信号サイクルの調査により、当方の青信号進入を立証した事例

原付に乗った依頼者が交差点に青信号で進入したところ、左方から進入してきた相手方運転の自動車と衝突し、負傷しました。相手方も、青信号で交差点に進入したと主張していました。

訴訟を提起しましたが、事故発生当時の、事故が発生した交差点とその付近の交差点に設置された、それぞれの信号機の信号サイクルを調査することにより、相手方が赤信号で事故が発生した交差点に進入したことを立証することができました。これにより、当方の主張に概ね沿った内容で、和解が成立しました。

 

2 無保険の相手方の勤務先会社から、賠償金の支払が得られた事例

車対車の交通事故でしたが、相手方は、任意保険に加入しておらず、また、支払能力も乏しいようでした。このため、相手方の損害賠償責任が認められても、実際に損害賠償金が支払われるかどうか不安でした。      

相手方が通勤途中に起こした交通事故だったため、相手方の勤務先会社に対しても、使用者責任に基づいて損害賠償請求の裁判を提起しました。その結果、勤務先会社の損害賠償責任も認められ、同会社から賠償金の支払を受けることができました。

交通事故の相手方が任意保険に加入しておらず、また、支払能力も乏しい場合、相手方の損害賠償責任が裁判などで認められたとしても、実際に損害賠償金を支払ってもらうまでが大変です。本件は、相手方が通勤途中で起こした交通事故で、しかも、相手方は、その車を勤務先会社の業務にも使用していたことから、勤務先会社の損害賠償責任(使用者責任)が認められました。その結果、同会社から賠償金の支払を受けることができました。

裁判で勤務先会社は、交通事故が発生した地点は、相手方の通常の通勤ルートから外れており、相手方は、私用で通勤ルートから外れた時に交通事故を起こしているから、会社は使用者責任を負わないと主張しました。実際に、相手方の自宅から勤務先会社に通勤するルートとしては、交通事故発生地点を通るルートとそうでないルートの2通りが考えられましたが、私は、地元のタクシー会社に問い合わせることにより、本件事故発生地点を通るルートの方が、一般的な通勤ルートであることを立証しました。

なお、通勤途中に交通事故を起こした場合、本件のように、その車を勤務先会社の業務に使用しているとか、地理的な状況などから車でなければ通勤できないなどの事情がなければ、勤務先会社の使用者責任が認められることは難しいことに、注意が必要です。

 

3 センターオーバーした車の過失の方が小さいと認定された事例

依頼者運転の車両は、カーブを走行中に、対向車線を走行してきた相手方車両と衝突しました。カーブのため依頼者の車両はセンターラインを越えて走行していましたが、衝突前、依頼者は相手方車両に気づいて減速したものの、相手方車両は、依頼者の車両に気づかず、減速もせずにカーブに進入してきました。このため、相手方の前方不注視などの過失の方が、依頼者の過失よりも大きいと考えられました。過失割合について当事者間で折り合いがつかず、訴訟が提起されました。

訴訟の結果、判決は、センターオーバーした依頼者の過失よりも、相手方の前方不注視などの過失が大きいとして、過失割合を、依頼者35、相手方65と認定しました。

自車がセンターラインを越えて、対向車線を走行してきた相手方車両に衝突した場合、センターラインを越えた車両の過失割合が100%とされることが一般です(別冊判例タイムズ38号「過失相殺率の認定基準」の【150】図)。しかしながら、この事例のように、カーブで自車がセンターラインをそれほどはみ出しておらず、一方、相手方が左寄りに走行していれば衝突せずにすれ違う余裕が十分あった場合は、相手方の過失の方が大きいと認定されることもあります。

この事例のように、センターオーバーした車両よりも、相手方の前方不注視などの過失の方が大きいとされた裁判例として、東京高裁昭和55228日判決・交通事故民事裁判例集13153頁があります。交通事故の過失割合は、上記判例タイムズ別冊「過失相殺率の認定基準」に基づいて認定されることが多いのですが、本事例のように少し状況が異なることにより、過失割合が大きく変動することがあるので注意が必要です。

 

4 相手方の「衝突時は停止していた」との主張が、退けられた事例

駐車場内での車同士の衝突事故でしたが、相手方は、「自分の車が停止していたところに、依頼者の車が衝突した」と主張しました。仮に、停止中の相手方の車に依頼者の車が衝突したとすれば、過失割合は、依頼者の方がかなり大きくなります。しかしながら、実際は、衝突した際には、相手方の車も走行中でした。 

訴訟となりましたが、判決では、双方の車の衝突による損傷の状態と相手方の証人尋問(本人尋問)の結果などから、相手方の「停止していたところに、依頼者の車が衝突した」との主張は事実に反すると、認定されました。

交通事故では、この事例のように、双方の車がどのような状態で衝突したか(事故の態様)が争われることが、しばしばあります。このような場合、衝突による車の損傷の状態が、事故の態様を判断する上での、重要な要素の一つとなります。したがって、万一、交通事故にあわれた場合は、少なくともご自分の車の損傷の状態を写真撮影するなどして、後々裁判になったときなどに証拠にできるようにしておくことが大切です。

 

5 出張中の交通事故への労災保険の適用

依頼者は、出張中の昼休みに交通事故にあいました。交通事故の加害者は、無過失を主張しており、加害者の過失を立証することは、難しそうでした。このため依頼者は、勤務先会社に労災保険を適用するよう求めましたが、会社は、このようなケースでは労使保険は適用されないと主張しました。依頼者は、この事案に労災保険が適用されるかどうかについて意見を求めて、当事務所を訪れました。 

労災保険は、「業務上の事由・・・による労働者の負傷」などに対して必要な保険給付を行うものとされます(労働者災害補償保険法の1条)。この事案では、出張中の昼休みの交通事故による負傷が、「業務上の事由による負傷」といえるかどうかが問題となります。

一般に、出張については、出張の過程の全般について、勤務先会社の支配下にあるとされます。つまり、出張中の昼休みや宿泊についても、勤務先会社の支配下にあるとされます。また、出張中の個々の行為については、それらが「積極的な私用・私的行為」である場合を除いて、「出張に通常伴う行為」とされ、それらの行為の際に負傷した場合、「業務上の事由による負傷」であると認められます。ここで、「積極的な私用・私的行為」とは、例えば、出張中に映画を見に行って映画館で負傷したとか、宿泊先の旅館で泥酔して騒いで階段から転げ落ちたというような場合で、これらの場合には、「業務上」であることは否定されます。

この事案のように、昼休みに昼食をとるなどして過ごし、その過程で交通事故にあって負傷した場合は、「出張に通常伴う行為」の際に負傷したといえます。したがって、「業務上の事由による負傷」と認められ、労災保険が適用されることとなります。

なお、裁判例としては、宿泊を伴う出張中、宿泊先の旅館で酒に酔って階段から転落し、これによる傷害が原因となって死亡した場合に、労災保険の適用が認められたものがあります(福岡高裁平成5428日判決・判例タイムズ832110)

このような出張中の交通事故で負傷した場合に、労災保険が適用されるかどうかは、「業務上の事由による負傷」といえるかどうかによって決まります。そして、「出張に通常伴う行為」の際に負傷したといえれば、「業務上の事由による負傷」といえます。勤務先の会社が、労災保険は適用されないと言っていても、そのまま信用しない方がよい場合もあります。