解決事例(医療過誤関係)

 

 

1 老人ホームの配置医師の過失が認められた事例(判例時報227148頁以下に掲載)

老人ホームに入所していたお年寄りが亡くなり、薬剤の投与に関する老人ホーム側の過失が考えられ、遺族が交渉しましたが、老人ホームは損害の賠償に応じませんでした。

このため、損害賠償請求訴訟を提起し、第一審は遺族の請求を認めませんでしたが、控訴審の広島高等裁判所は、老人ホームに配置された医師の過失を認め、同医師に慰謝料などの支払いを命じました。

協力医師の支援を得て、診療記録を詳細に調べ、医学文献を検討し、医師の過失を丹念に主張しました。詳細につきましては、「判例時報」227148頁以下をご参照ください。

 

2 糖尿病足病変の治療に関して示談が成立した事例

依頼者は糖尿病でしたが、その方の足のケガに対して、医師が適切な治療をしなかったため、重篤な障害が残りました。当初医師は、責任を認めませんでした。

一般に、糖尿病の患者さんは、靴ずれ、巻き爪などの小さな足のキズや、足の低温やけどが悪化し、その結果、足を切断せざるを得なくなるということが、しばしば起こります。これは、糖尿病の患者さんは、動脈硬化により血液の流れが悪くなったり(血流障害)、免疫力が低下したりして、細菌などに感染しやすくなり、このため、足の小さなキズが、潰瘍(カイヨウ。皮膚が欠損した状態で、感染を合併すると周囲が赤くなる)や壊疽(エソ。皮膚や皮下組織などが死滅して暗褐色や黒色に変色する病気)に進行しやすくなり、また、治りにくくなるからです。このような糖尿病の患者さんの、足の潰瘍や壊疽を、「糖尿病足病変」といいます。

糖尿病足病変の治療については、例えば、日本糖尿病学会の「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013」では、「重症下肢虚血(潰瘍や壊疽等を伴うような重症の下肢の血流障害)を呈している患者は速やかに血管専門医にコンサルトし、血行再建術の適応について検討する」とされています。しかしながら、実際には、ガイドラインに沿った適切な処置がとられず、足の潰瘍や壊疽が進行し重症化してしまうことが、しばしばあるようで、私も、同様の相談をこれまでに何度か受けたことがあります。

上記の事例では、交渉により、相手方医師との間で示談が成立しました。

糖尿病足病変は、内科、皮膚科、形成外科など医学の複数の専門分野に関係します。それだからこそ、その治療は難しくなるともいえます。本事例では、これらの学会が作成している、各種の糖尿病足病変の診療に関するガイドラインに基づいて、相手方医師の「医療ミス(=過失)」を主張しました。一般に、医学会の作成した「ガイドライン」は、医療ミスの有無を判断する上での重要な基準となります。

 

3 病院の説明義務違反が認められた事例

入院中の患者さんが、病院内の事故により死亡しました。当初、病院は、死亡の経緯について事実と異なる説明を、家族にしました。

家族が病院に対して損害賠償を求める訴訟を提起したところ、判決で、病院の説明義務違反が認められました。

一般に医療機関は、患者に死亡などの悪い結果が生じた場合、その経緯や原因について、患者本人やその家族に対して適切に説明をすべき義務があるとされます(大阪高裁平成251211日判決・判例時報221343頁など)

この事案では、裁判で病院は、事実と異なる説明はしていないと主張しましたが、多数の病院関係者を証人尋問することで、病院の主張に矛盾があることが明らかになりました。ただ判決では、説明義務違反は認められたものの、患者さんが病院内の事故で亡くなったことについての病院の過失は、残念ながら認められませんでした。